2012年1月9日月曜日

私の還暦過去帳(135)

私がアルゼンチンのサルタ州、エンバルカションの町で支配人の
仕事を始めた時です、町から12kmは離れていて、農場に着い
て からはしばらく身体が慣れるまでは、近所の様子を見ていま
した。

それと前に支配人をしていたボリビア人が、契約が切れても残っ
ていました。一作契約ですから歩合も私が少し高く、売上の3%
が貰えるようになっていました。

前の支配人の家族は先にボリビアに帰郷して、小屋に従弟と住
んでいまして、オーナーが早く出て行く様に話していましたが、
ずるずると居座って目障りでした。昼休みの時間に狩猟用の
双眼鏡で家の廻りを見ていました。

日本から持ってきた、凄く性能が良いもので、少し暗い日陰でも
鮮明に覗く事ができました。
離れた作業小屋から誰か出て来ました。 双眼鏡で覗くと、手に
何か持っている感じで隠す様にして包みを持って歩いて河岸の
小屋の方に消えて行きましたが、

今の時間は皆が昼寝をしている時間です、一瞬、おかしい~!と
胸騒ぎがして小屋に戻る男を見ていました。やはり前のボリビア
人の支配人で農場に居残っている男でした。

私は作業小屋まで行きましたが、農薬を管理するロッカーが少し
誰か触った様で、不審に感じました。
高価な農薬の箱を買い入れたばかりで、かなりまとめて積み上げ
ていまして、用心に2重にカギを付けていました。

点検するとカギも壊れていなかったのですが、しかし何かおかし
い感じで、ロッカーの前の土間の土を、綺麗に草箒で平らにして誰
か来たら直ぐに判る様にして、その日は午後の仕事を始めまし
たが、その翌日です、私は用心して昼寝もしなくて見張ってい
ました。

しばらくして、ボリビア人の前支配人が歩いているのを見つけ、
作業小屋に入るのを監視していました。今度も直ぐに出て来ると
手に包みを隠すようにしています、彼が消えて直ぐに作業小屋に
行くと、土間にくっきりと足跡が残り、ロッカーを開けた事が分
りました。

昼休みが終り、私は農場のオーナーと話して、現行犯で捕まえる
事にして許可を貰い、一切を任すと委任状を取りました。それ
と前支配人が午後に荷物を運ぶので、トラクターを貸してくれと
話していたと聞き、直ぐに先回りして、トラックを用意して
ライフルと拳銃を車に入れていました。

監視をさせていた使用人が慌てて、彼がすでにトラクターで出か
けたと知らせてきました。私は直ぐにトラックに飛び乗ると、
微かに土ぼこりを上げて畑の農道を走るトラクターを発見して、
追跡しました。

私有地の中で停めて尋問しなくてはなりません、外に出たら問題
になります、ボリビア人は私に気が付いてボコボコの農道をかな
りのスピードを上げて走り逃げ様としているのが感じられ、私は
トラックを先回りして、ジャングルの切れ目の農場の境で車を止
め待ち構えました。

150mぐらい離れていたと感じます、彼はトラクターを飛び降
り畑の中を走って逃げ様としてあせっている様でしたが、土を起
こしたばかりで上手く走る事が出来ません、私はライフルで逃げ
るボリビア人の前の土を威嚇射撃で、3発ぐらい連続して撃ちま
した。
微かに土煙が上がり、ボリビア人は両手を上げて止まり、私が
ライフルで撃った事で驚いて、近寄るとガタガタ震えているのが
分りました。
10mばかり前に来ると、両手を広げてうつぶせになる様に指示
して、狙いを付けて見ていました。

慌ててボリビア人は伏せると、私は近寄り凶器を隠していないか
調べている所に、銃声を聞いて先ほど見張りを頼んでいたインジ
オが飛んできました。
彼は帽子に付けている細い皮ひもを取ると、後ろ手に縛り上げて
いました。
そして『この野郎に、散々いじめられたー!』と話していました。

トラクター後部の簡易荷台を探すと、ナイロンの袋に入った
農薬、トラックの部品、トラクターの予備の新品部品などが出
て来ました。 ここでは農薬だけでも1kgが3000ペソで、
使用人の一ヶ月の給料となり高価な品物でした。

総額でかなりの金額となり、オーナーも警察に連絡して引渡しま
した。 夕方、警察のジープが引き取りに来て、手錠を掛けて連行
して行き、その日の内に、ボリビア人の身内の親戚も解雇して
追い出してしまいました。
警察でも私が威嚇射撃をしたのは私有地内で、逃亡を止める為の
正当行為として、証人に見張りのインジオが見ていたので、それ
ですべて終りでした。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム