2011年10月28日金曜日

私の還暦過去帳(80)

私は6年前、インドを旅行して来ました。次男がインドに奨学金を
もらい、現在のインドの目覚しいITの進歩するビジネスの実態を
アメリカ政府の依頼で調査研究しているからで、5月でそれも終
るので、インドに招待してくれたのでした。

首都のニユーデリーに滞在して次男と市内の観光をして歩いて
居た時に、息子の友人でかなりヒンズー語も話せる女性が市内
に有る、一番古いモスクでコーランと音楽を地方から出て来て、
モスクの寺院の前の広場で奉納の為に唄って、演奏しているのを

見に行く事になり、夕方少し薄暗くなって出かけて行きました。
入り口は混雑する雑踏と、狭いバザールの様な路地を息子の後
を付いて人込みを掻き分けて歩いて行きました。ワイフは頭にか
ぶるスカーフを買い、スッポリとかぶっていました。

裸電球に照らされる照明の薄暗さと、前が見えない様な雑踏に驚
きながらワイフは息子に手をしっかりと握られて歩いていました。
私はその横を、スリに気をつけて物珍しく廻りの店を見ながら歩
いていた時、『チョンチョン~!』と私の上着の袖を引く気配が
有りました。

雑踏の人込みの中で、モスクの入り口の前には沢山の参拝者の喜捨
を求める貧しい人が並んでいました。その間を歩いていたのでした
が、ふと見ると、まだ7~8歳ぐらいの女の子が大きな目を見開いて、
私の目と『パチーン!』と眼差しが合いました。瞬間、少女はニッ

コリと大きな目で私を見ながら微笑ました。雑踏の隙間からさし込
む薄暗い灯りでその微笑が見え、おかっぱ頭の髪の毛が黒々として
いたのを見る事が出来ました。瞬間、私の脳裡に終戦後間もない頃
に満員列車の中で父に連れられて、お盆の墓参りに郷里に行った時
の思い出がフラッシュバックして脳裡に浮びました。その時の乗客の中

にいた女の子と重なり瞬時に50年以上も前の事が心を絞めつけま
した。心に浮んだ映像がキューンと音を立てて廻っている感じでし
た。少女が差し出している手にポケットに有る小銭のルピーを全部
握らせました。少女は両手で小銭を握り私に合掌する様に、手を合
わせていました。直ぐに雑踏の人ごみの中に押されて見えなくなり、
息子が呼ぶ声が聞こえてきました。

『モスクの参拝は靴を脱いで預けて行くからーー』と話していました。
モスクの寺院に入りきらびやかな電燈の光が輝き、奉納している人々
が唄う歌声が聞えて来ました。

歌声は澄んだ響きのコーラスで、私の心を不思議な世界に連れて行く
感じでした。

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