2013年7月3日水曜日

第3話、伝説の黄金物語、(92)


罠に掛かった勝ち組

罠に掛かった勝ち組の二人は用心深く連絡してきたが、富蔵はすぐさま
連絡人を追跡してその様子を探らせたが、これは上手く行った。
さりげなく追跡させた事で、その連絡人の居所とその身元が完全に判明
した。まずその線から大元にたどり着く事ができると考えていたが、それ
が正解であった。

サンパウロ郊外の農場に潜伏して、ノロエステ線の鉄道沿線の移住地
にも協賛者が居る事が分かった。それは簡単に連絡者がその日本人移
住地に出した手紙から、かなりの協賛者の身元がバレて、相手の用心し
た動きを簡単に見張る事ができるようになった。

電話も無い移住地の時代で、連絡は移住地の郵便局私書箱宛てに送
られていたので、簡単に連絡内容を知る事が出来たので、彼等の計画
の大体が分かって来た。
移住地の協賛者を集め、組織作りをして負け組みの知識人やその容認
派を封じ込めると同時にブラジル日本人社会を支配しようと考えている
と富蔵は思った。

それなら益々、トップの二人を何とか始末しなければならないと感じてい
た。おそらくその二人が居なくなれば、勝ち組が崩壊して、自然消滅する
道を歩むと感じていた。

日本人で、昔の砂金採掘現場で働いた事のある人が、知り合いを通じ
て相談に来た。彼の話を聞くと昔、一山当ててかなりの財産を残してい
た人であったが、その現在の農場に彼等が、しつこく勝ち組の勧誘に来
て、今では脅しに近い状態で寄付金を要求していると言う事であった。

彼はブラジルのインフレを考えて、今でも財産を金塊と砂金で隠して持
っていると話していた。何処から聞き付けて来たかは知らないが、富蔵
はすぐにこれは危ないと感じていた。
富蔵達はは自宅隣の自分の日本食レストランに案内して話し込んでい
た。おなじ年代の中年の男性は富蔵の勧めで、リオ・ベールデの仲間の
貸金庫と隣の銀行も共用する安全な場所を紹介していた。

彼はそこまで30分程度の距離の移住地に近い所で農業と牧畜を併せ
て広く営んでいたので、直ぐに紹介状とアマンダの兄弟に話をして、彼
の自宅から銀行まで護衛の3名を同行させるようにした。

富蔵はその話をした後に一策を考え付いた。それを餌に彼等をおびき
出す事は、もって来いと感じていた。皆と相談すると、勝ち組が興味を示
して彼の財産をまとめて狙って居るとすれば、これは意外と上手く行く方
法だと皆も思った。

まずその計画を始める前に全ての彼の家にある金塊と砂金が、貸し金
庫に移動されてしまった。
富蔵達のリオ・ベールデに居る配下の若者から選抜して、護衛を一人、
彼の家に住み込みで警備させていた。

警護の若者は彼の近所に住んだ事もある地理も良くわかる若者で、モ
レーノ達に付いて仕事を何度もしているので、安心して任せられる男で
あった。護衛は彼の農場では馬で何処に行くのにも身軽に動いて農場
周りを用心していた。

用意ができると早速、連絡係の耳に入るように噂を流して、事を大きく
騒いで話を吹き込んでいた。見事にその罠に掛かって来た。

勝ち組が寄付を強要するのでリオ・ベールデに資産を移動して預けると
いう言う嘘の話であった。戦後の日本人には大金を持つ者は少なく、彼
の様に砂金掘りで一山当てたと言う様な人は、ごく僅かな人しか居なか
ったので、勝ち組の二人が異常な興味を示した事は間違いなかった。

直ぐに囮の用意が出来て、富蔵が手配した偽物のメッキした金塊、これ
も偽物の砂金袋、ガラスの貴金属などを用意して彼の資産を全部運び、
貸金庫と銀行に預けると言う事にした。

アマンダの兄弟から銀行までの護衛に、町で警察官をしている親戚を
二人付けると言う事を勧めて来たのでその者を使う事にした。
前もって事前にその通り道を走って、罠を掛ける場所的な所を下見して
いた。
それと同時に彼の農場に居る護衛の若者の配下が、農場から1kmも
行かない交差点の田舎道で不審な車が何度も来て下見している感じが
すると報告して来た。
富蔵は逃げ道からしたら、そこで勝ち組が襲うことは90%の確率で起
こり得ると考えていた。予定された囮の日が来た、前のフォードのセダン
に日本人の農場主に扮装した配下を後部座席に座らせらせ、ハンドル
は農場に居る護衛の若者が握り、その助手席には配下の男が乗り込ん
で座っていた。
後の車に警官二名が制服で手にはライフルを持って、ハンドルは配下
の若者が握り、横に富蔵が座った。富蔵は用心にシュマイザーのマシ
ンガンを持って来ていた。

いよいよ行動の日が来た、囮の餌は大きく話して吹聴していたので、
勝ち組の二人が喰いつくと感じていた。銀行に行く日も連絡係にさりげ
なく話が伝わる様にしていた。

餌には簡単に喰いついて来た、十字路を通過する瞬間、狭い田舎道
の横から中型トラックが突進して来ると、ぶつかりそうになりながら富蔵
達の囮の車二台を分断して、富蔵が乗る車をブロックした。
トラックの後から来たセダンが前の車を追い始めた。

富蔵は車から飛び出すとトラックの運転手にシュマイザーを構えて狙
いをつけ、両手を挙げさせて動きを封じていた。警官二人は手のライ
フルを構えると同時に、二人がライフルで狙って前の車を追跡始めた
セダンを狙い銃撃した。

瞬時に2丁の警官のライフルが発射され、2度目の銃撃にセダンの車
がぐらりと100mばかり先で、路肩に突っ込むのが見えた。
路肩で停止したセダンからドアが開き、一人がよろめいて出てくると、
ライフルで狙い警官に応戦して来た。

若い警官が銃を捨てろと大声で警告したが、その声を無視するかの
ように一発撃ったと同時に警官が慎重にトラックの陰から狙い狙撃した。

男が崩れるように田舎道の草むらに崩れ込んでいた。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム