2013年6月30日日曜日

第3話、伝説の黄金物語、(91)

勝ち組の陰謀、

大きな事件が過ぎ去り、しばらくは穏やかな生活が過ぎて行った。

富蔵達が経営したり、参加したり、出資したビジネスもかなりの大きさ
になっていた。各部門は独立して責任者を立て、それを統括してサン
パウロの飛行場の中に設置されている事務所で管理していた。
時代が動き、ブラジルも戦後の日本からの情報やその日本社会の有様
が家族やマスコミの情報で詳しく知ることが出来るようになり、戦後の落
ち着いた日本人社会が見えて来た。

その当時には戦後日本の混乱から逃れて来る、家族のブラジルに呼
び寄せも可能になり、外国船に乗船して僅かな数の人がサントス港に
降り立つ姿が現れた。

それらは戦前日本に渡ったブラジル生まれの二世で、ブラジルのパス
ポートも持ち、ブラジルの出生証明も完備している人が主であった。

その様な話を富蔵が知ると、郷里の懐かしい家族の思い出もあり、
ふと・・、日本の事を考えるようになったが、現実にはまだ広大なブラジ
ル日本人社会が落ち着いて、平和な社会が動き出したとは言えない状
況であった。

それは日本人の中には、狂信的な日本勝利を盲目的に信じる人達が
残っていた。勝ち組と称された団体であった。

それと1946年の新円切り替えで、紙くず同然の日本円を今度は
日本人が日本人相手に、言葉巧みに売りつける事がブラジル奥地の
閉鎖された移住地の戦勝派のなかには被害が出ていた。
富蔵達の宣伝工作がそこまで浸透しなかった様だと感じていた。

サンパウロのアメリカ大使館からも多くの敗戦日本の資料が日本人社
会に届けられたが、頭から拒否する勝ち組の集団には届かなかった。
その中の首謀者らしき勝ち組、二人が張本人だということが分かって
きた。
中国人達の中華金融組織は殆ど壊滅した状態で、その後の活動は殆
ど消えたように無くなっていたが、勝ち組の組織は、より強固で、狂信
的な信仰集団の様にまとまり、敗戦容認派の排除と危険な敗戦容認知
識人暗殺が計画されていることが、富蔵達の情報に入ってきた。

それがついに実行され、富蔵が関係する人物が暗殺された。
その人は富蔵達が戦後の混乱期に日本人集団移住地や地域の啓蒙
運動を共に動いた仲間であった。そして困窮する日本人農家への融資
を取り扱い、その尽力により多くの日本人と日本人社会が立ち直り、
救われたのであった。

富蔵は激怒していた。中国人達の中華金融組織は殆ど壊滅した状態
で、その後の活動はまったく静かになっていたのに、勝ち組騒動が現
実の危険なテロを行うようになり、実際に暗殺事件を起こすような事ま
でした事は、富蔵には許す事は出来なかった。

すぐさま富蔵や行動を起こすと、まず完全な情報を集めて、それを確
かめ、各地の知り合いや友人達にも聞いて、今、何をして行動しなけ
ればならないか決めていた。
勝ち組のテロ実行者と、その指導的なボスの二人を掴んで情報を絞り
込んでいた。

この二人を何とか始末をつけないと、これから同じ様な暗殺が起き、
日本人社会の貴重な指導的立場の人物を失う事になると感じていた。

これまでの全ての日本からの情報も、アメリカ大使館が提供した記録
フイルムや、戦災資料などは見向きもしない、まさに狂信的な人物で
あった。
その男達が、また暗殺未遂を起こしていた。未遂に終わらせたのは、
事前に注意してその対策をしていたからであった。富蔵の配下の若者
で、モレーノに訓練された男達の中から推薦で、護衛のボデイガードを
付けて居たからであった。

その護衛は日系人の混血でかなりの空手や柔道も学んだ若者で、富
蔵が了解を取ってオフイスの護衛として、拳銃を常時携帯して見張って
いたので、組合事務所から帰宅する理事を車に乗り込む寸前に銃撃し
ようとしたが、護衛に簡単に反撃され襲撃者は逃げ去ってしまった。

農業組合の理事で、富蔵が融資をして営農資金を日本人達に出してい
た理事で、日系社会では重要な人物であった。狙われたのは融資相談
に来る日本人達に戦後の日本の現状などを、解説して新しい日本の国
作りなどを講義して、大きな影響力を発揮していたからだと考えられた。

富蔵はすぐさまモレーノに連絡すると、マリオを派遣してもらった。
マリオは配下の手下二人を連れてサンパウロの事務所に富蔵を訪ねて
来た。
富蔵は彼等に今までの経過を説明して、勝ち組の狂信者の写真を見せ
て対策を練っていたが、狂信者二人を囮で誘き出して逮捕か、最悪は
消す事を考えていた。

彼等が日本が勝利したと言う宣伝で、活動資金を得るのに詐欺的な行
為をして、資金活動を始めて居たからで、それに騙された様にして、
資金提供をすると言う連絡を付ける事に成功した。
狂信者二人は、その罠に掛かって来た。

彼等が日本人社会で動いて資金を集めていると言う事は、勢力を拡張
しようと考えていると感じていた。どちらにしても目障りで、危険で、現在
のブラジル日系人社会には害こそあれ、何も役にもたたず、ブラジル社
会にも大きな信用低下と、悪評を広めるだけだと感じていた。

かなりの資金を出すと、狂信者に連絡を付けた時に話していたので、大
きな餌の魅力に相手が飛びついて来たと感じていた。
連絡に来た勝ち組狂信者の連絡係りに、日本式に挨拶代わりにと、か
なりの現金を包んで持たせていたが、これが狂信者相手に大きな信用を
得た様だ。

しばらくして、勝ち組の連絡係りが富蔵に、近い内にサンパウロでお会い
して、挨拶をしたいと伝言を伝えて来た。勿論の事に活動資金にする金
の要求だと感じていた。

直接に伝言を伝えに来たのは用心して電話も手紙も使わない事は、追わ
れている事を用心していると感じていた。

富蔵も直ぐに動き出した。

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