2013年5月31日金曜日

第3話、伝説の黄金物語、(83)

平和への裏工作

ドイツ人二世がゲルマン民族協会に持ち込んだ資金は直ぐに活用され、
動き出していた。多額の資金で、金の威力は直ぐに各地に浸透して、
宣伝効果も大きかった。

記録フイルムも編集され、各地のドイツ系社会で上映され、平和がない
ともっと沢山の死傷者と戦災の被害が拡大すると説かれ、現実の記録
フイルムがそれを如実に見せ付けていた。

それと同時にナチに協賛する人達が動揺して、ユダヤ人虐殺の現実の
記録フイルムを見て衝撃とナチ政権のスローガンが、ブラジルのドイツ
社会では理解されない大きな差を自覚していた。
僅かな時間に義援金が集まり出して、もっと活動資金が豊かになり大き
く動き出していた。
活動資金が大きな力を発揮しだして、民族運動となって宣伝、広報など
で、ナチ協力者達が萎縮して、沈黙をする様になり、地域によっては彼
等の活動が陰を潜めてしまった。

僅かな期間でそれが実行され、成功したのは、指導的な役割の人々の
力が大きかったと感じられた。
スミス商会やダイヤモンド商会などからの斡旋で、欧州に展開する連合
軍情報部からの、記録フイルムも定期的にゲルマン民族協会に届けら
れていた。
それと同時に連合軍占領地域からの郵便も赤十字を経由して届く様に
スミス商会が大きな力を発揮していた。
数多くの親兄弟や親戚などの消息とその安否が分かり、現地の戦災や、
戦場からの便りなどの二ユースも届いていた。これが大きなインパクトと
なり、劇的な変化が出て来た。

現実を家族、親戚からの詳しい情勢ほど、真実を伝える物はなかった
のである。ナチの宣伝などは即座に否定され、誰もその頃には常識の
ある者は戦争終結と終戦の時期を考えるようになっていた。

僅か20kgのドイツ人二世が提供した金塊の資金が、大きく生きて活動
していることを、皆が認めていた。その後、金塊は定期的に二世から送
られてきて、スミス商会よりゲルマン協会に資金として現金を送り届けら
れていた。
もはやドイツの戦線崩壊と食料や弾薬・燃料の欠乏は何処を見ても、誰
が考えても否定できない状態で、すでにドイツ降伏は時間の問題となっ
て来た事が分かった。
それと同時に日本軍は南太平洋で玉砕と敗退が続き、悲惨な戦場の様
子も伝わって来ていた。
富蔵はドイツと同じく日本もその様な運命になると予測して、準備をして
いた。それは絶対に連合軍には負けては居ないと言う、日本人の狂信
者達のグループが動き出していたからであった。
それは終戦後、勝ち組と負け組みに分かれて、いがみ合い、殺し合いも
してテロを起こしていた。

その当時、ブラジル政府に日系社会の指導者的な人物が拘束され、収
容されているだけであったが、その家族達に対して富蔵達が救援工作を
して資金的な援助を裏でしていた。これはスミス商会のルートで、ブラジ
ル赤十字社を通じて活動が行われ、収容者達には慰問品が定期的に送
られて居たが、それも富蔵の愛人リカの力が大きい事が分っていた。

彼女も日系の血を持つ女性で、すでに富蔵との間の娘も成長し、日本人
的な顔付きで誰からも可愛がられていた。富蔵の個人的資産であったが、
富蔵は今まで蓄えた資金は何も惜しい気がしなかった。これで現実に大
勢の生活に困窮する日本人達が救われ、収容所に暮す日本人指導者
達の心を和ませて、食事など待遇改善などにも大きな力があったからだ。

その頃、スミス商会の保安幹部から富蔵達に密かに連絡が来ていた。
ゲルマン協会と協力してナチ過激派の精鋭分子二名を、最危険な人物と
して、処分する事が話し合われていた。

これまでの説得と、話し合いや妥協も探られていたが、処置無しとなり、
彼等が標的とするドイツ系のゲルマン協会に危険が迫ったので、それと、
危うくゲルマン協会の会合が襲われて、銃弾の嵐を受ける寸前に、スミ
ス商会の看視していた警備員に阻止されて事なきを得ていた事が分か
っていた。

シュマイザーのマシンガンを彼等が何処からか手に入れている事も判明
していたからだ・・、
『キチガイに刃物』という事で、彼等が根城とするサンパウロ郊外の農場
がすでに看視体制の中で見張られていた。

囮の情報が出され、その罠に掛かり、ナチ狂信者二人が動き出した事が
分かった。富蔵達の飛行場からも近いので、スミス商会の保安幹部が事
務所を連絡場所に使っていた。
予定準備が決められ、大型トラックで事故に似せて殺害を計画され手配
されていた。

郊外の農場から彼等が車でサンパウロに向かうタイミングを狙って、何
度か大型トラックを使い、連携してリハーサルを済ませていた。
『狂信者の邪魔者と危険分子は死んでもらうしかない・・』平和と安全と、
多くの幸せな家庭を破壊する事は阻止しなければならない』と皆が同意
していた。

電話が鳴り、彼等が偽情報に踊らされ、朝早くサンパウロに向けて動き
出した事を看視員から連絡して来た。
事は計画どうりに実行された。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム